重要判例解説(2);東京地方裁判所平成23年2月18日判決

1 事案
A社は,Y1(被告)が創業した株式会社であり,ジャスダック証券取引所に株式上場している。
A社の収益性が鈍化したことから,同社代表取締役Y1は,マネジメント・バイアウト(MBO)による経営改善を図った。
MBOの受け皿としてY2株式会社(被告)が設立されると,Y2社は,A社株式について1株当たり23万円の買付価格で本件公開買付けを行った。
そして,上記公開買付成立後,A社では,全部取得条項付種類株式制度を利用して残存株主の締め出しが行われ,その後,A社はY2社に吸収合併された
A社株式を保有していたXら(原告)は,本件MBO実施により,所有するA社株式を1株23万円という低額で手放すこと余儀なくされ,適正価格(1株当たり33万6966円。東京高決平成20年9月12日において裁判所が示した価格)との差額1株当たり10万6966円等の損害を被ったと主張して,損害賠償金等の支払を請求した。その際に,A社を承継したY2社に対しては会社法350条又は民法709条に基づいて,A社代表取締役であったY1に対しては会社法429条1項又は709条に基づいて,A社の取締役あるいは監査役であったY3ないしY7(被告)に対しは会社法429条1項に基づいて,損害賠償責任を主張した。

2 判旨
請求棄却。
「取締役は、会社に対し、善良な管理者としての注意をもって職務を執行する義務を負うとともに(会社法330条、民法644条)、法令・定款及び株主総会の決議を遵守し、会社のために忠実に職務を行う義務を負っている(会社法355条)が、営利企業である株式会社にあっては、企業価値の向上を通じて、株主の共同利益を図ることが一般的な目的となるから、株式会社の取締役は、上記義務の一環として、株主の共同利益に配慮する義務を負っているものというべきである。」
ⅱ 「MBOにおいては、本来、企業価値の向上を通じて株主の利益を代表すべき取締役が、自ら株主から対象会社の株式を取得することになり、必然的に取締役についての利益相反的構造が生じる上、取締役は、対象会社に関する正確かつ豊富な情報を有しており、株式の買付者側である取締役と売却者側である株主との間には、大きな情報の非対称性が存在していることから、対象会社の取締役が、このような状況の下で、自己の利益のみを図り、株主の共同利益を損なうようなMBOを実施した場合には、上記の株主の共同利益に配慮する義務に反し、ひいては善管注意義務又は忠実義務に違反することになるものと考えられる。」
ⅲ 「MBOが、取締役の株主の共同利益に配慮する義務に違反するかどうかは、当該MBOが企業価値の向上を目的とするものであったこと及びその当時の法令等に違反するものではないことはもとより、当該MBOの交渉における当該取締役の果たした役割の程度、利益相反関係の有無又はその程度、その利益相反関係を回避あるいは解消するためにどのような措置がとられているかなどを総合して判断するのが相当である」
ⅳ 「Y1の利益相反の程度は相当強いものであったことは否定できない。」「利益相反を解消するための措置は、......必ずしも十分なものであったとは言い難いが、......利益相反の解消を図る措置も一応されていたことにも照らすと、本件MBO当時において、Y1が、取締役としての株主の共同利益に配慮する義務に違反して、本件MBOを強行したものとまではいえないというべきである。」
 ⅴ 「Xらは,取締役が信義則上株主の利益を最大化する義務を負うとして、MBOにおいては、取締役は、合理的に得られる最高の価格になるように公開買付先と価格交渉をする義務があると主張する。しかしながら、公開買付けにおける買付価格は、対象会社の企業価値の評価はもとより、買付側の資金調達の方法等の諸事情を踏まえて決定されるものであるから、対象会社の取締役に原告らが主張するような価格交渉義務があるといえるのかどうかは疑問があるが、この点を措くとしても、......23万円というTOB価格は......積極的に妥当であると判断するまでの水準には至らないものの、......A社の株主にとって財務的見地から妥当であると判断されているのであるから、公開買付価格を23万円としたことが、取締役としての株主の共同利益に配慮する義務に違反したものとはいえない。」

3 解説
本件判決は,株式会社の取締役が株主の共同利益に配慮する義務を負っていること,取締役が自己の利益のみを図って株主の共同利益を損なうようなMBOを実施した場合はこの義務に違反することを示し,その上で,本件ではこの義務に反するとまでは言えないとしたものである。
取締役の善管注意義務の内容およびそれに違反するか否かの判断基準を示した裁判例だといえる。

アクセス

JR新宿駅南口徒歩2分

東京都渋谷区代々木2丁目6-9
第2田中ビル4階(地図はこちら

交通

  • JR、京王線、小田急線、都営地下鉄「新宿駅」 南口徒歩2分
  • 東京メトロ丸ノ内線「新宿駅」徒歩5分

債務整理の無料相談(24時間受付)

借金問題で弁護士をお探しの場合

相談は何度でも無料です

無料法律相談(24時間受付)をご利用下さい

刑事事件の無料相談(24時間受付)

逮捕・起訴されて弁護士をお探しの場合

刑事弁護はスピードが勝負

無料法律相談(24時間受付)をご利用下さい

離婚法律相談

皆様と弁護士と二人三脚で問題の解決へ進みます

離婚協議書作成とメールによる話し合いサポート

相続法律相談

新橋本店との連携で専門性の高い案件にも対応

新宿を起点とする沿線都市に出張相談可(日当+交通費をいただきます)

交通事故無料法律相談

保険会社の言いなりにならない解決、適正な損害賠償額を目指すためにサポートいたします