重要判例解説(5);福岡地方裁判所平成23年2月17日判決

1 事案
X社(株式会社整理回収機構。原告)は,債権回収や企業再生などを目的とする株式会社である。
K社は,パチンコ店の経営等を目的とする株式会社であり,甲・乙・丙等5店舗を経営していた。同社の元代表者はB,現代表者はその息子のCであり,B,Cおよびその親族が同社株式を所有する同族会社である。
K社は,平成15年ころからのパチンコ業界競争激化に伴って大規模な設備投資を行ったことや個別店舗での経営で失敗したこと等が原因で,巨額の負債を抱えることになった。
このままでは倒産すると考えたCらは,弁護士Qに相談した。それとともに,同年10月までに,業務上必要な債務の支払いを除いて,各金融機関への支払を事実上停止した。
同年11月4日ころ,Qは,CらK社グループの幹部と共に会議を行い,会社分割及び会社新設によって再生を図ることを決定した。その計画は,利益を上げられる事業は新会社に移転し,債権者と交渉して債務整理を進めること,設立する会社の代表者はCの妻A(K社株主や債務保証人などになっていない)とすること等を内容としていた。  
同年11月18日ころから,K社は,主要債権者に対して再生スキームを説明し,新設分割についての分割計画書を作成した。
同年11月30日には,N・Y1・P等の分割計画書を作成し,R・NK等の新設会社を会社分割の手法で設立し,K社のパチンコ店店舗甲・乙・丙を各新設会社に承継させた。
同年12月2日,C及びQがX社を訪れ,K社の会社分割による再生計画を説明して協力を求めたが,資料の提示も具体的内容の説明もなかったために,X社が書類提出や返済計画の明示を求めるだけで終わった。
その後も,K社は,営業許可名義の移転等の手続を進め,平成16年1月7日,N社・Y1社・P社・Y2社の株式等を合計200万円で譲渡した(1社につき50万円ずつ)。
ところで,Aは,かなり以前にK社で働いたことはあるものの,その後は長年専業主婦をしており,会社経営の経験は一切なかった。Cの仕事についても,自宅に送られたC宛ファックスをCに渡す程度の関与しかしていなかったが,Cや親族らの依頼を受けて,Cや親族らのためになるならと,新会社の代表者となることや出資金の譲渡を受けることを承諾した。
平成19年10月31日,P社は,Y2社に吸収合併された。
平成15年11月当時,X社は,K社に対して,元金分だけでも約6億4000万円の債権を有していた。しかし,上記債権に係る債務は新設会社に承継されず,K社からの債権回収が困難となってしまった。
そこで,X社は,K社が会社分割制度を濫用して経営するパチンコ店各店舗について新会社としてY1ないしY3社(平成18年6月1日,K社から新設合併の方法で新設された会社。代表者はA)(被告。以下「Yら」)を設立して,その営業を同社に移転させ,X社のK社に対する債権の支払を不当に免脱させたとして,Yらに対して,X社のK社に対する債権の支払を求めた。

2 判旨
請求認容。
「Xは、法人格否認の法理のうちいわゆる法人格濫用の類型に該当する旨を主張しているところ、これが認められるには、①法人格が支配者により意のままに道具として支配されており(支配要件)、かつ、②支配者が違法または不当な目的を有すること(目的要件)が必要である」。
「本件会社分割前のK社と本件会社分割後のYらでは、その事業態様や支配実態は実質的に変化がないと評価せざるをえず、法人格が支配者(C及びその親族)により意のままに道具として支配されている(支配要件)というべきである。」
「K社が行おうとした今回の再建スキームの主な目的は、K社の債務の半分近くを占めるXの債務の支払を免れることにあったといわざるをえない」
「K社は、債権者のうちXに対する債務支払を恣意的に免れることを意図して、会社分割制度を形式的に利用あるいは濫用して再建スキームを実行したといわざるをえず、違法または不当な目的を有していた(目的要件)というべきである。」
「法人格否認の法理は、詐害行為取消権とはその要件及び効果を異にするものであって、詐害行為取消権が行使できない場合でなければ、法人格否認の法理が適用できないこともない。」
「Yらは、信義則上、K社と別法人であることを理由として、Xの本件債権に対する責任を免れることは許されない。」

3 解説
本件は,債務超過会社が,債権者の関与なく,会社分割を利用して優良資産と一部の負債を承継させるという,いわゆる「濫用的会社分割」の事例である。Xは分割会社(K社)の債権者であり,会社分割無効の訴えの原告適格を有しない。本件判決は,このような債権者に対して,法人格否認の法理による救済を行った。商法4の事案で判決が示唆していた「個別の救済」の一例と言えるだろう。

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