重要判例解説(9);福岡高等裁判所平成23年4月27日判決

1 事案
平成15年12月30日 株式会社X(原告・控訴人。パチンコ店3店舗等を有する地方中堅企業)は,Y銀行(被告・被控訴人)から金額1億5000万円を変動金利で借り入れた(「本件借入れ」。金利は{短期プライムレート(短プラ。民間金融機関が企業に紀元1年未満の融資をする際の最優遇金利)+0,75%}で5年間の均等分割返済)。
その際,Yは,変動借入れが多いXには金利リスクをヘッジする必要があると考え,金利スワップ取引をXに提案した。
これに伴って,Xには金利スワップ取引の知識も経験もなかったことから,YはX代表者と少なくとも3回の面談を行い,複数の提案書を用いて,スワップを組んだ場合の実質調達コストについて例示した。そのうちの1つには,Xの実質調達コストは,TIBOR(東京の銀行間取引金利)が一定(1,285%)であるという仮定のもとならば,コストは3.65%になると記載されていた〔X実質調達コスト={a借入金利(短プラ)+b支払金利-c受取金利(3か月TIBOR)}で算定〕。
平成16年3月4日,XとYは,金利スワップ取引契約(本件金利スワップ契約)を締結した。その内容は,想定元本3億円,期間6年間で,XがYへ固定金利2,445%(年率),YがXへTIBORを,平成17年6月8日から3か月ごとにそれぞれ支払うというものであった。
平成17年6月以降,XとYは,5回にわたって本件金利スワップ契約上の支払をそれぞれ履行した。この間,受取金利TIBORが支払金利を下回っていたため,XはYに差し引き883万355円を支払った
本件金利スワップ契約上の支払と本件借入金利の合計額が年間で約1000万円となることから,Xは,Yに騙されたと思うようになった。
そこで,Xは,Yに対して,平成18年7月20日,本件金利スワップ契約につき説明義務違反および不適正・不公平な勧誘があったとして金融商品の販売等に関する法律4条(平成18年改正前),民法415条,709条,715条に基づく支払金額と遅延損害金との支払を求めた。
原審(福岡地大牟田支判平成20年6月24日)は,TIBORやスプレッド水準等について正確な理解を欠いていたとしても,変動金利と固定金利についての基本的理解があれば実質的な調達コストの判断は可能であり,X側には必要な判断力が認められるとして,請求を棄却した。
Xは控訴し,それにあたって,①取引の内容(特に金利)②清算条件③契約で用いた固定金利の値が先スタート型なためにXに不利となること,についての説明義務違反があると主張し,また,不適正・不公平な勧誘(商品の欠陥性)に当たる理由として④スワップ契約での銀行利ざやが大きいので非現実的な金利変動がなければヘッジ機能を果たさないことを主張した。

2 判旨
原判決変更,請求一部認容(過失相殺4割),一部棄却(上告)。
ⅰ「専門的性質の契約等においては、その知識を有する当事者には、しからざる他方当事者に対する契約に付随する義務として、個々の相手方当事者の事例に見合った当該契約の性質に副った相当な程度の法的な説明義務がある」。「本件銀行説明においては......①契約締結の是非の判断を左右する可能性のある、中途解約時における必要とされるかも知れない清算金につき、また、②先スタート型とスポットスタート型の利害等につき、さらには③契約締結の目的である狭義の変動金利リスクヘッジ機能の効果の判断に必須な、変動金利の基準金利がTIBORとされる場合の固定金利水準について、これがスワップ対象の金利同士の価値的均衡の観点からの妥当な範囲にあること等の説明がされなかったことからすると、同説明は、全体としては極めて不十分であったと言わざるを得ない」。「また、④本件金利スワップ契約の固定金利は、契約締結当時に金融界で予想されていた金利水準の上昇に相応しない高利率であったばかりでなく、Xの信用リスクに特段の事情も認められないのに、本件訴訟でXが例示した他の金利スワップ契約のそれよりもかなり高いもので、前記金利スワップ契約のスワップ対象の各金利同士の水準が価値的均衡を著しく欠くため、通常ではあり得ない極端な変動金利の上昇がない限り、変動金利リスクヘッジに対する実際上の効果が出ないものであったことは明らかである」。「Yにおいて、本件金利スワップ契約の締結に当たって、契約に付随するXに対する説明が必要にして十分行われたときは、Xにおいては、目的とした変動金利リスクヘッジの可能性の不合理な低さ等から、本件金利スワップ契約は締結しなかったことは明らかで、その説明義務違反は重大であるため、本件金利スワップ契約は契約締結に際しての信義則に違反するものとして無効であり、また、その説明義務違反は、被控訴人銀行の不法行為を構成する......」。
ⅱ「以上によれば、本件金利スワップ契約は、その締結に際してYに重大な説明義務違反があるため、同契約は無効であるばかりでなく、YのXに対する不法行為として、それによってXが被った損害を賠償する義務がある〔が〕......本件銀行説明の程度や本件X側の責任事情を斟酌すると......損害金額としては、本件差額金として支払った合計金額の約4割及び提訴日までの遅延損害金を過失相殺として減じた後の残額......とするのが相当である。」

3 解説
本件判決は,専門的性質のある契約において,それについての知識を有する当事者は,他方の当事者に対して,契約に付随する法的な説明義務を負うとした上で,本件事案の下では説明の不十分な点があり,その説明義務違反が不法行為を構成するとしている。一般論の部分はともかくとして,本件での説明義務の内容やその義務への違反が認められるかについては,実務的な観点から疑問の声も多い。また,「専門的性質のある契約」にどのようなものが含まれるか(本件裁判例の射程距離)も不明瞭である。引用に際しては慎重な検討が必要な判決と言えよう。

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